CATDOLL:「SHIROBAKO」プロデューサー川瀬康平氏に聞く、アニメ業界の現場の実態

CATDOLL:「SHIROBAKO」プロデューサー川瀬康平氏に聞く、アニメ業界の現場の実態

2015年3月25日~26日にウェブサイト「AniKo」で公開されたオリジナルアニメ「SHIROBAKO」のインタビューです。インタビューを受けるのは「SHIROBAKO」のプロデューサー、川瀬浩平さんです。

観た後、プロデューサーが実際に観客の考えを考えていることがわかります。 SHIROBAKOの作品に興味がある人は、見ればきっと役に立つでしょう。

「このプロジェクトを引き受けるべきなのは明らかだ」と私は思いました。

——『SHIROBAKO』プロデューサー 河瀬康平(前編)

「SHIROBAKO」は、アニメ制作会社を舞台に、5人の女の子たちの活躍を描くオリジナルアニメです。制作進行(後に制作監督に昇格)、アニメーター、3Dアニメーター、新人声優、脚本家志望者など、さまざまな環境で奮闘する少女たちの姿を、大げさでユーモラスな演技で観客の前に直接届ける作品。現在、TV放映も終盤に差し掛かっており、この作品がどのようにして生まれたのか、映画プロデューサーの川瀬康平氏にインタビューした。

個人データ

川瀬 浩平

ワーナーエンターテイメントジャパン株式会社所属のプロデューサー。『マジカルナースムギ』『灼眼のシャナ』『ロククラブ!』などにプロデューサーとして参加。 》《selector infected WIXOSS》などの作品があります。

インタビュー内容

アニメ会社の物語を伝えるアニメ作品は作るのがとても難しい

——『SHIROBAKO』という作品は、どのような経緯で企画が始まったのでしょうか?

本作の河瀬さんへの提案は、もともとPAWORKSの堀川健司社長と水島努監督からのものだった。それで、堀川さんは、アニメーション作家の物語を語る作品、あるいは作家の技を継承できる作品を作りたいという思いをずっと持っていたということを後から知りました。水島監督は制作進行からキャリアをスタートし、アニメ会社そのものを描く作品を作ることに常に興味を持っていた。そして『アナザー』を作るにあたって、堀川社長が水島監督にこのことを伝えたところ、監督が「実は僕も同じ考えなんです」と言って、みんなでこの企画を推進し始めたんです。

——川瀬さんはいつから関わるようになったんですか?

川瀬:仕事でPAWORKSを扱うことが多いですね。最初に教えてくれたのはINFINITEの永谷隆志さんでした。彼はこの映画のプロデューサーの一人でもある。 「オリジナルアニメの企画があって、2期に渡る大作なんですが、聞いてもらえませんか?」という意味でした。その時、彼は私に事業計画書を見せてくれました。その事業計画は非常にシンプルで、言葉だけで構成されていたことを覚えています。

——このプロジェクトについて初めて聞いたとき、どう思いましたか?

私自身もアニメ会社の作品企画をこのように表現したいと考えていたため、河瀬さんたちのやりたいことはすぐに分かりました。しかし、アニメ会社の日々の業務を描くというのは、実は大変な作業です。アニメーション業界は多くの部署とさまざまな職種で構成されており、それらを作品に組み込むには膨大な段取り作業が必要です。詰め込んだとはいえ、結局はアニメ会社の日常の話なので…映像的につまらない感じがします。そして、大きな作業負荷を設定することは、お金と時間を費やすことに等しいのです。クリエイターは努力と根気によって作品を創り出すことができますが、お金を稼ぐ必要もあることを考えると、商業的な作品を成功させることは非常に困難です。したがって、ビジネスの観点から見ると、この計画は実現可能ではないと思います。一般的に、アニメーション制作会社はこのようなプロジェクトを引き受けません。彼らは多大な労力を費やしていますが、最終的な製品は退屈なもの、あるいは見栄えの悪いものになっています。誰もがそう思うと思いますし、私も例外ではありません。当時、私はこの計画を実現するのは難しいだろうと考えていました。

——これまで、アニメ業界を題材にした作品はいくつかありましたよね?

川瀬:はい。大地泰太郎監督は「ブラックビューティー」というアニメーションを監督しました。アニメは撮影されているものの、この構成がなければ撮影できない、あるいはこのストーリー背景の下でシリアスなプロットを撮影できないため、内容は主に面白いものしかできません。そうは言っても、私はアニメーション業界で18〜19年間働いており、この業界は常に非常に興味深いと感じてきました。見栄えの良いアニメーションを見ると、視聴者は必ずその作品の制作過程を知りたくなります。たとえそれが単なる噂であっても、彼らは多かれ少なかれ興味を持つでしょう。堀川さんと私は出発点が違いますが、この分野で何か面白いものを皆さんに見せたいと思っています。だから当時は、この映画を作るのに予算を割いてくれるテレビ局はあるのだろうかと思っていたんです(笑)。

——(笑)。

川瀬:でも、この企画をいただいたときに、これは僕が引き受けるべきだと思い、すぐに引き受けました。

—— すぐに同意していただいたのはすごいですね。あなたは今おっしゃった困難をはっきりと理解しています。

河瀬:私は現実主義者なので、「運命だ」などとはあまり言えないんです。でも、私が『SHIROBAKO』のプロジェクトに出会ったとき、本当にそう思いました。そこで次に検討すべきことは、「では、具体的にどのように資金を調達すればよいのか?」ということです。そして「PAWORKSは映画を作るために私にいくらのお金を要求するのでしょうか?」 (笑)。

——なるほど(笑)。

河瀬氏は別の視点から「プロデューサーとして、商業的な視点でこの作品を見ています。まずはスーパーバイザーが水島努さん、シリーズ構成が横手美智子さん、そしてアニメーション制作会社がP.A.WORKSさん。この布陣であれば、完成品のクオリティーについては心配いりません」と語る。また、水島監督とはこれまで何度もご一緒させていただいているので、制作チームが変わったら検討させていただくかもしれません。私がその場で同意した主な理由はこれでした。

——河瀬さんとPAWORKSのコラボレーションは今回が初めてですよね?以前、当社に対してどのような印象をお持ちでしたか?

川瀬:「この会社の仕事は厳しいな」という印象が強いです。うまく表現できなかったかもしれませんが、長くこの業界で仕事をしていると、作品から伝わってくる姿勢から制作会社のカラーや雰囲気がわかるのが好きです。この点、PAWORKS がどんなタイプの映画を作るにしても、最初から最後まで真剣さと厳しさを感じさせます。だから、『SHIROBAKO』を彼らに託せば、彼らもきっと緻密な作品を生み出すことができるはずだ。

——あなたのおっしゃることはよくわかります。

河瀬監督の作品は『Angel Beats!』など、すごく真剣に作られている感じがするんですが……もちろん、これは岸誠二監督の影響もあるんでしょうね。 『CANNAN』のようなアクション映画も「そこまで細かくする必要あるの?」という感じがするし、『花咲く花』も同じような感じがする。彼らの会社の作品の雰囲気は素晴らしいと思います。しかし、正直に言うと、作品はあまりにも厳密に制作されていたため、手放すことができず、何かが欠けているような気が常にしていました。ここが足りない部分で、水島監督ならそれを埋めてくれる。最初はそう思いました。

—— 提案書を見るだけでも、とてもよく考えられているのですね。

川瀬さん、なんて言えばいいでしょうか?それは私が予見できたことのような気がします。水島監督はシリアスなストーリーの作品を撮影に任せると、喜びや怒り、悲しみ、幸せなどを作品に盛り込み、シリアスな内容をエンターテインメント性あふれるものに仕上げる。長年にわたり彼の仕事を間近で見てきた私は、彼にはその能力があると確信しています。だから、PAWORKSと水島監督は相性抜群の稀有な組み合わせだと言えます。

——『SHIROBAKO』の脚本はどうやって作られたんですか?

水島監督、横手美智子、堀川社長、永谷隆司ら河瀬さんの企画段階から関わっていた人たちです。プロジェクトがスタートしてからは、私と現場プロデューサーの相馬祥二さん、設定プロデューサーの橋本昌英さん、脚本家の吉田玲子さんが加わりました。上記8名がメインの制作メンバーで、脚本会議には8名ほどが出席しました。ストーリーの背景を決めたら、次はキャラクターの作成です。各キャラクターの配置をどのように構成し、キャラクター間のやり取りをどのように配置するかによって、ストーリーが生き生きと展開します。 5 人の主要登場人物を詳細に描写する必要があります。また、水島監督は脇役の中年男性にいかに余裕を持たせるかということにも特に気を配ったという。会議中、全員がこれらの詳細について熱心に議論しました。打ち合わせの中で分かったのは、水島監督は作品を創るにあたって、最初から自分が何を求めているのかわかっていて、頭の中に明確な設計図があったということだ。主人公のシャオクイとその友人たちは、高校時代から自分たちでアニメを作っていて、これから業界に入るということも当初から計画していたとのこと……。第1話冒頭のカーチェイスシーンも当初から計画していたもの。監督は、アニメーション制作の仕事でカーチェイスシーンをずっと取り入れたいと思っていたという。

——そういうことだったんですね。あの部分は間違いなく、ある車のアニメへのオマージュだと思いました。

河瀬さんは、以前からこのようなことを物語の中でやってみたいと思っていたといい、まずは制作部長たちに会社の車を運転させて道路でレースをさせるところから始めたという。私の最初の反応は「何を言っているんだ?」でした。他の出席者も「?」と思いました。でも監督がそう言うから、やってみようって(笑)、そういう流れでカーチェイスのシーンが生まれたんです。

——「職場アニメ」も本作の大きな魅力の一つですね。

この映画の魅力は、河瀬監督の個性豊かな登場人物たちが、共通の目標に向かってチームとして協力していくところにある。実際、ある意味では、それを見ている人は、この目標が最終的に達成されることを知っています。この前提のもと、ストーリー展開をよりドラマチックにし、たとえストーリー展開を予想していた視聴者であっても、深く感動できるようにするにはどうすればいいのか。それは脚本家やシリーズ構成の力量、そして水島監督の演技力にかかっています。大体こんな感じです。

—— こういった独創的な群像劇を作るのは大変そうですね。

川瀬さんは難しい状況に陥っています。今回は、脚本全体を数人で完成させました。メイン脚本はシリーズ構成の横手さんが手掛け、各話の脚本は吉田玲子さんが担当し、2話分の脚本は浦畑達彦さんが担当した。これを行うには理由があります。この映画のプロット構造の全体的な特徴は、1 つのエピソード内に常に 3 ~ 4 つの並行したプロット ラインがあり、そのうちの 1 つがこのエピソードで解決される必要があり、複数のプロット ラインが同時に進行し、密接に関連していることです。通常であれば、シリーズ構成でまず展開の方向性を決めておき、複数の脚本家に仕事を任せて完成させるという制作期間の短縮策も考えられるが、『SHIROBAKO』ではその手法を実現するのは難しい。こうしたオリジナル作品の場合、少数の脚本家を探し、脚本を磨くための十分な時間を与える必要があります。制作過程でもそのことに改めて気づきました。

——脚本の完成には長い時間がかかったそうですね。

川瀬:はい。またある時、「SHIROBAKO」の脚本を読んでいた時に、突然既視感を覚えたんです。読んでいて、「あ、これ『パトレイバー』の脚本じゃないの? 僕からすると、このキャラクターたちは特車二課の人たちと同じなんだよね」って気づいたんです。そう言ったら、隣にいた脚本家さんも「ああ、そういうことか」って(笑)。

- なるほど。横手さんのテレビアニメデビュー作は『機動警察パトレイバー』。

川瀬さんがこれを理解した後、私にとってすべてが理解できました。メイン脚本家の横手さんは、今の『SHIROBAKO』の脚本のあり方に大きく貢献してくれました。

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